5月12日

朝からランニング。そして、授業に出る。授業ではスターリン死後のフルシチョフによるスターリン批判、ポーランド危機やハンガリーでの動乱など、東側間の関係について解説される。ここのあたりの解説はとても緻密で、おそらく日本のどの大学でもこれほどの研究動向が触れられる場所はないだろう。というのも、先生の専門が、この分野であるので、とても丁寧かつオタク的である。資料に関する話しまでしてくれる。おまけに授業後に未定稿の論文までプレゼント。すごいサービス精神だ。先生の論文は、ロシア語を駆使してロシアのハンガリー動乱への介入過程を明らかにしようとするもので、新冷戦史研究に位置づけられるものであろう。とてもおもしろい。満足である。

昼は、イタリア人研究者と会食。この前、食事をした時になぜか意気投合し、今回も研究にかんする情報交換。どうやら、イタリアの中国研究は日本のそれと比べると、惨憺たる状況らしい。日本との違いは色々なところにある。第一に、裾野問題。やはりアメリカが世界随一の研究層だとすれば、それに次ぐのが日本かもしれない。欧州は、地政学的な観点からそれほど中国は重要な対象ではなかったので、学術界における地位はそれほど高いものではなかった。第二に、就職問題。裾野が狭いので、研究者の教育システムなりディシプリンがほとんど確立していない。だから、彼ら若手研究者はものすごく苦労しているようだ。そして、イタリアの文化的背景から、教授との関係が大学就職の大きな要素となるようだ。要はコネが重要らしい。第三に、そのため、中国への長期留学などが制限され、中国に根ざした研究などが活発にならないようだ。他方で、英語への言語の壁が低い分、米国における中国研究との研究交流は進んでいるようで、理論への貢献を求められる傾向が強いようだ。以上にみられるようにイタリア、欧州の中国研究は日本のそれとは大きく違う。日本の中国研究はかなり閉鎖的なものと言わざるをえないだろう。それでいいんだという立場もあるが、私は積極的に研究交流は行うべきだと思うのだが・・・。

夜は、故郷へ帰ってしまう中国人の友人と湘菜を食べにいく。とてもおいしい。